蓮華寺池公園にほど近い蓮生寺は、武蔵国熊谷郷(埼玉県熊谷市)出身の熊谷次郎直実が開山した寺。
直実は源頼朝に臣従し源平合戦で数々の武功を挙げ、頼朝から「日本一の剛の者」と称された人物。しかし、16~17歳の若武者だった平敦盛を泣く泣く討ち取ったことで、武士の非情さや無情さに苛まれます。
のちに仏門に入る大きなきっかけとなったこのエピソードは、『平家物語』の名場面となっています。
世の無常を感じて出家した直実は、浄土宗の開祖である法然上人に弟子入りし、蓮生房と名乗るようになります。
建久6(1195)年、蓮生房は故郷の母の見舞いに行く途中、山賊に襲われて無一文となり、藤枝宿の有力者であった福井長者に旅の費用を借ります。
この時、借金の質として念仏を唱えると、蓮生房の口から阿弥陀如来が現れ、福井長者の口の中へ入っていくという不思議な現象が起きました。翌春、故郷から戻る道中、蓮生房は福井長者のもとへ立ち寄り、お金を返しました。蓮生房の教えに従い、福井長者が南無阿弥陀仏を称えると、質として預かった阿弥陀様が口の中から現れ、蓮生房の口に戻ったのです。
蓮生房の法力に畏敬の念を抱いた福井長者は、蓮生房の弟子となり、自らの屋敷を念仏道場の寺とし、蓮生寺を開創したと伝えられています。