『ほととぎす漬』は江戸時代に藤枝宿の西の外れにあった「東屋(あずまや)」という一膳飯屋(旅人に軽食を提供するお店)でお茶漬けの具として提供されていた漬物です。
奈良漬にした白うりに和辛子を塗り、塩漬けにされた紫蘇の葉で巻いたもので、和辛子がピリリと効いて、食べると辛さで涙が流れるほどだったそうです。藤枝宿の名物として、旅人の評判を集めましたが、当時、この漬物には名前がありませんでした。「ほととぎす漬」と呼ばれるようになったエピソードとして次のような話が伝えられています。
ある日、一膳飯屋に入ってきた一人の武士がこのお茶漬けを注文し、辛さで涙を流しながら店主に「この茶漬けの辛い漬物に名前があるか」と尋ねました。店主が「まだ名前はありません」と答えると、しばらく考えていた武士は「『ほととぎす漬け』と名付けるのがよかろう」と話しました。店主がその理由を尋ねると「昔の歌に『木枯らしや 木枯らしの森のほととぎす 聞くたびごとに 涙そぼるる』という歌がある。木枯らしの森のほととぎすの鳴き声が涙を誘うのと同じように、この漬物の辛子も涙を誘うからだ」と答えました。(木枯らしの森は、府中宿と丸子宿の間を流れる藁科川の中洲にある小さな山。古くから歌枕の地として知られています)
以来、この漬物は「ほととぎす漬」と呼ばれるようになり藤枝宿の別のお店でも提供されるようになりましたが、時代の移り変わりとともに姿を消し、幻の漬物となってしまいました。
そんな幻の漬物が、地元の有志で結成された「チームほととぎす」の手によって2015年に復活!2022年3月には、未来に継承したい伝統食として文化庁の「100年フード」にも認定されました。
復活した「ほととぎす漬け」は、藤枝駅前の居酒屋「おもひで横丁 藤枝市場~」(藤枝市駅前2-8-2)で味わうことができます。
本当に涙が流れるほど辛いのか?ぜひ一度ご賞味ください。